■INTERVIEW
鷺巣詩郎 × SAM
今回のクリエイターゲストは、25年のキャリアを持つロンドン在住の音楽プロデューサー、鷺巣詩郎さんが登場!
MISIA、平井堅、SMAPなどへの楽曲提供から映画・TV等の映像音楽を手掛けるなど、幅広く世界の音楽シーンでマルチに活躍する鷺巣さんに、日本の音楽シーンやロンドンの近況について聞いていきます。
SAM (以下 S):すごい方なので少し緊張しています(笑)。今はロンドンに住んでいらっしゃるんですか?
鷺巣 (以下 鷺):はい、ロンドンにいることが多いですね。
S:いつ頃からロンドンに住まわれているんですか?
鷺:実はロンドンとパリと東京を行ったり来たりの生活なんですけど、ロンドンに住み着きだしたのは10年くらい前からですね。
S:ロンドンといえばテロの影響が気になるんですが、どのような状況ですか?
鷺:今は至る所にお巡りさんがいるという状況ですね。元々お巡りさんが多いんですけど、ちょっと増えたという感じです。
S:やはり雰囲気はピリピリしているんですか?
鷺:それがあまりそうでもないんですよね。もちろんピリピリしている所もあるんですけど、割とみんな明るいですね。夜のクラブシーンもホント今まで通りですし。
S:9.11ではNYが暗くなったじゃないですか。その辺は違いがあるんですかね?
鷺:元々そういったことに慣れていたんでしょうね。それとNYと違って地域が広いですから、多少の安心感はあるかもしれないです。
S:ロンドンとパリと東京を行き来しているということですけど、パリではクラブを運営されていたんですよね。どういうお店なんですか?
鷺:今でも店は残っているんですが、ボクが実際に運営していたのは93〜94年で、現在はほんの少し関わっている程度ですね。お店自体は万国共通のいわゆる“クラブ”ですね。80年代くらいからNY・ロンドン・東京とクラブムーブメントがありましたけど、90年代に入ってもパリにはなかったんですよ。なんでこんな先進都市にクラブがないのか?ということでボクが始めたんです。周辺にはこのInterFMのようなパリで一番人気のあるクラブステーションがあるんですが、「どうせ始めるならその近くが良いだろう」ということからそこで始めたんですね。すると、これが引き金になってその地域にいろんなクラブがたくさん出来て、90年代はちょっとしたものでしたね。でも、クラブって浮き沈みの波があるじゃないですか。だからボクは2年間やって、その土地のフィクサーみたいな人に売り渡したんです。
S:それまでパリにクラブがなかったのが、ホントに意外ですね。
鷺:そうですね。ミラノとかパリといったヨーロッパでもコンチネンタルな場所って、意外と保守的なんですよね。そこがロンドンと大きく違うところかもしれません。でも、今は面白いですよ。
S:日本からヨーロッパに渡った理由はなんだったんですか?
鷺:80年代、日本でたくさんの仕事をしていて、一回りした感じがあったんですよ。それで80年代終わりくらいからヒップホップもクラブミュージックもとても面白くなってきて、その一番面白い現場を見たかったんですけど、それってやっぱりクラブなんですね。有名なクラブもあるし、プライベートな感じのパーティーもロンドンでは盛んだったんですけど、そういうのはそこに行かないとわからないですからね。
S:日本でそこまでのポジションにいた方が移り住んでしまうのは冒険だったんじゃないですか?
鷺:そういう感覚は全然なかったですね。ロンドンに永住するつもりはなかったし、あちこち行き来しているのが自分の性分に合っていると思っているので。もちろん東京もすごく面白い場所だし、ここに3ヶ月以上いないと自分にとってつまらないわけですよ。どこに行っても、東京に戻ってきて確認したいことがたくさんあるじゃないですか。やっぱりボクら日本人だし。インターシティ(都市間)でいろんなものを作っていくことがすごく大事なことだというのは、ボクらの共通認識ですよね。
S:言葉にして言われるとしみじみわかります(笑)。実際、海外のいろいろな所でやられてみて、外から見た日本の音楽シーンについてはどう感じますか?
鷺:音楽シーンというのは、今やいろいろなものにリンクしていますよね。ファッションであったりクラブという場であったり、ダンスなんて切っても切れないですよね。そう考えると、今の東京の音楽シーンっていろいろな影響が出ていると思います。ただ、東京とロンドンだったり大阪とロスだったり、インターシティのやりとりがもっともっと盛んになって欲しいと思いますし、ボク自身もそうしたいですね。
S:是非やっていただきたいですね。
鷺:パリではクラブミュージックが遅れてきたという話をしましたが、今は状況が一気に変わってダンスの分野がすごく面白いんですよ。アメリカやロンドンでは新しいダンスシーンがたくさんありますけど、今のパリはヨーロッパの伝統的なオペラと結びついていて、例えばティーンエイジャーのダンサーがオペラシアターで踊った後にクラブで踊っていたりするんです。
S:それは面白いですよね。ボクらみたいなストリートダンスに関しては、パリとかのダンサーとコラボレーションしているという話もよく聞くし、フランスが注目されているんですよ。ボクもホントにパリに行きたいんですよね。
鷺:是非いらしてくださいよ。フランスのヒップホップやR&Bアーティストの振り付けもするし、オペラ的なミュージカルの振り付けもする若いコリオグラファーがたくさん出てきて、ちょっと面白いことになっていますね。
S:オペラの振り付けができるということは、クラシックやジャズ、モダンダンスなどの基礎がないと難しいですもんね。
鷺:どっちが先かちょっとわからないですが、どちらかが劣っていたとしても良い方を伸ばしてやろうという精神があるのかもしれないですね。
S:ところで、鷺巣さんは25年以上もこの世界でご活躍されているわけですが、実は"笑っていいとも"の音楽も手掛けていらっしゃるんですよね。あらためてすごい方なんだなと実感しましたよ。
鷺:"笑っていいとも"ですごい方というのも面白いですね(笑)。
S:でも、80年代からアイドル〜BGM、映画音楽など様々な音楽に携わっていて、すごい数ですよね。
鷺:怒濤のような80年代で仕事に明け暮れていましたね。でも、楽しかったですよ。当時の日本の音楽シーンは、90年代などとはちょっと違う輝きがあった時代ですね。
S:ホントに日本らしかったという感じもしますよね。
鷺:そうですね。やっぱり音楽って面白いなと思うのは、70年代、80年代と括ることができるじゃないですか。90年代以降もそれなりの性格が出ているし、それぞれ確かな特徴があるということはホントに面白いことだと思います。
S:よく10年サイクルで回ると言われますけど、やっぱり確実にそういうものがあるんですね。
鷺:ありますね。だから90年代に流行ったものも、また絶対に来るんでしょうね。
S:鷺巣さんはいろいろなアーティストを手掛ける傍ら、ストリングスアレンジャーとしても実績がありますよね。元々はクラシックの出身なんですか?
鷺:いえ、ボクはジャズからです。だからストリングスのアレンジに関しても、あまりそれっぽくない書き方なのかもしれないですね。アメリカでストリングスのアレンジやる方もジャズ方面・クラシック方面の方の2通りいるんですが、ボクらが好んで聴くような黒人音楽をやる方はやはりジャズ出身の方が多いですね。
S:8月3日に"SHIRO'S SONGBOOK"の最新作をリリースされましたが、何の知識もなく聴くと日本人とは思えない作品ですね。
鷺:ありがとうございます。ボクは歌ったり演奏したり、ましてや踊ったりするわけではないので(笑)、どうしても全体をまとめるところを中心に作り込んでいきますね。そういう意味で歌はロンドンのボクのクルーが歌っているので、そこは少しロンドンっぽく聞こえるかもしれないです。
S:すごくヨーロッパの匂いはするんですけど、全体を通して黒っぽい感じがして、すごくカッコイイです。鷺巣さんのロンドンのクルー、いろんな方が参加されているんですね。
鷺:そうですね。みんな10年以上一緒にやっている仲間なので、お茶の間感覚というか(笑)、みんな集まって食堂で作っているような家族的な雰囲気ですね。
S:アルバムのコンセプトはなんですか?
鷺:今回はちょっと大人っぽさを強調したんですよ。さっきの70年代80年代の話じゃないんですけど、「もう一通り聴いたよ!」という全部一周してしまった人のために、「こんなのあるんだけど?」という感じですかね(笑)。
S:なるほど。言われてみればそうですね。
鷺:ですから中級編という感じですね。ボクも聴いた人もいろいろなものを通過しているわけです。昔見たTV番組じゃないですけど、シンパシーが湧くじゃないですか。もちろん、若い人にも聴いてもらいたいけど、まずはそういう一周してきた人に薦めたいですね。
S:ボクらのような一周してきた人には「最近こういうの聴いていなかったな」という感覚もあるし、初めて聴いた方はすごく新鮮に聴けるアルバムですよね。
鷺:もちろん新しいところも打ち出していきたいんだけれども、長くやってきたという深みみたいなものもちょっと自慢したい、というのもあって(笑)。
S:その辺は聴いてもらえれば絶対わかりますよ。ホントにオシャレですよね。大人が大人っぽい曲を聴いても酔える、みたいな感じで。
鷺:“大人の遊び”というのがちょっとしたキーワードですね。
S:またヨーロッパの方には戻られるんですか?
鷺:戻りますけど、行ったり来たりの生活を当分は続けるつもりです。
S:ホントにいろんな角度から日本の音楽シーンに影響を与えて欲しいと思います。
鷺:逆にボクもいろんな影響を受けたいですし、音楽と結びついたいろいろなことを吸収していきたいと思います。もちろん東京でもライブをやりたいですね。
S:最後の質問なんですが、鷺巣さんが音楽に携わっていく上で一番こだわっていきたいことは何ですか?
鷺:やっぱり古今東西、世界中のいろんな所、今も昔も良いものがある。そういうものを追究していきたいと思います。
SAMが感じた鷺巣詩郎
「ダンスと音楽と違いはあるんですけど、こういう業界の先輩方と話す機会があまりないので、すごく良い話を聞けたと思います。いろんな国に行っていろんなところから吸収するけど、東京に戻ってこないと落ち着かないという話がボクも共感できて印象的でしたね。それと、あの年になってもまだいろいろなものを吸収したいと聞いて、オレもまだまだ頑張れる気持ちになりました。」
- Posted by STAFF : 2005年08月13日 22:00 -
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